まるるの冬毛が早くも抜け始めています。そんなところでも暖冬を実感するふあららいです。
お迎えドライバーのおじさんが去り、ここから留学生活の始まりです。
家主のハリエットと握手をしながら挨拶を交わし、家の中に招き入れられました。 玄関から廊下を進み、すぐ左側が私の部屋でした。
スーツケースを転がしながら入ると、すぐ横に真鍮のフレームのベッドがあり、正面には上げ下げ窓が二つ、窓のそばには八角形のテーブルと椅子、左側に進むとクローゼットのドア、その隣にはブラウン管の小さなテレビ(ビデオデッキも!)と並んでチェストがありました。
6畳ほどの部屋ですが、至れり尽くせりです。
クローゼットのドアとの対面にもう一つドアがあって、そこはバスルームに直結。バスタブと小さな洗面台がありました。 この家のトイレはバスルームとは別となっていました。
ハリエットが1枚の紙を手渡しながら言いました。
「家のルールはここに書いてある通りだけど、一応説明しておくわね」
彼女の部屋、リビング、ダイニング、キッチンと各部屋を案内され、ゴミ出し等の方法を教わりました。 こちらは移動の疲れと時差ボケで意識がもうろうとする中、必死に頭をフル回転。オーバーヒートで煙が出そうなくらいでした。
家は日本で言うところの2LDKの間取りで、リビングとダイニングが広々としています。 アパート自体はかなり古い感じでした。 おそらく戦前からの建物ではないかと思います。
私たちが家を歩き回っている間、2匹の猫が後を付いていました。
来訪者に慣れているのか、怖がることなく好奇心全開の様子です。 1匹は長毛の黒猫で、もう1匹は短毛のグレーの猫でした。
「黒いのはCOCOで、グレーのはSUSHIっていうの」
スシのお腹が大きく張っているのが気になりました。
「彼女、妊娠しているの?」
「いいえ。引き取った時からこんな体型よ」
2匹ともシェルターから引き取ったそうで、スシはつい2週間ほど前にこの家にやって来たとの事。
私の家にも拾った猫が3匹いたので、持ってきた写真を見せたりして猫談議に花を咲かせていると、突然ハリエットがこう言いました。
「あなた英語がわかるからよかったー。前に来た子は2人で辞書を引きながら会話して、それは大変だったー」 学生の受け入れは私が3人目だそうです。
何か食べる?と聞かれましたが、食欲よりも睡魔のほうが強くてお断りしました。
とりあえず必要な物をスーツケースから出していると、外から物凄い轟音が聞こえてきました。 始めはなんだかわかりませんでしたが、そのうちアパート横のジャクソンストリートを駆け上がるケーブルカーの音だとわかりました。
おおよそ15分毎の轟音に、うわっ眠れるかな~との心配は不要、疲れもあって朝までぐっすりでした。
翌日は学校でプレイスメント(クラス分け)テストがあります。