高校では明治以降の近代史をしっかり学ぶべきだと考えるふあららいです。こと20世紀前半は周辺の国々を巻き込んだいろいろなことがあったのですから。
去る11月に7年振りとなる台湾訪問をして来ました。そして渡航前にガイドブック以外で何冊か台湾についての本を読みました。歴史については近代において日本も深く関わっているので、無関心ではいられません。
しかしその中の一冊に思いがけず感情を揺さぶられることになるとは・・・
この『台湾人生』(酒井充子著 光文社知恵の森文庫)では著者が日本統治時代を生きたお年寄りを訪ねて、彼らの口から語られた人生について紹介しています。
台湾には日本語を話すお年寄りがいると聞いたことはありましたが、彼らがどのような人生を送ってきたのかまで思いを馳せることはありませんでした。この本を読むと人間として様々な思いを抱えて生きてきたことがわかります。
日本が治める世の中に生まれて、民族の血こそ違えど「日本人」として育ったこと
学業を諦めようとしていた時に手を差し伸べてくれた日本人の恩師
戦地では日本兵として誇りを持って戦ったこと
自分たちは「日本人」なのに終戦後日本は自分たちを置いて去って行き、孤児になってしまった
祖国復帰後は中国語がわからなくて苦労したこと
台湾に対して日本には責任があり、その責任の百分の一でも持って欲しい
読みながら泣けて泣けて仕方がありませんでした。
自分たちを捨てた日本への恨みと、アイデンティティの根源である日本への懐古の気持ちが混在し愛憎が交錯する様子に、単に「可哀そう」では済まされなくて胸が締め付けられる思いがしました。捨てられてもなお、親を慕い続ける幼子のようで。
戦後、日本が去って中華民国への光復を果たしますが、祖国復帰の喜びや期待はすぐに打ち砕かれることに。
国民党軍の上陸を出迎えた台湾の人々は愕然とします。
彼らの目の前に現れたのは、見慣れた日本の軍隊とは全く異なり、隊列はばらばらで、ゲートルもきちんと捲いていないようなみすぼらしい姿で、全員が背中に雨傘を背負い、なかには鍋や食器はては寝具を担ぐ者までいた。
(ウィキペディア「台湾復興」より引用)
そして国共内戦の末に大陸から撤退してきた国民党の暴政により引き起こされた二二八事件、さらに白色テロという政治弾圧(捕えられ死刑となった知識人のほとんどが無実の罪を着せられていた)が戒厳令が解除となる1987年まで続いたのでした。
そんな世の中を生き抜いてきた「日本人」だった彼らは、時局に翻弄された罪なき人々なのです。日本だって戦時中そして終戦後は大変でした、大変でしたけど、かつての同胞たちの苦労に少しでも寄り添う気持ちを持ちたいと思ったのでした。
台湾に行く人にぜひ読んでほしいです。